「ナイロン・カーテン/ビリー・ジョエル」 82年 評価4


 80年の傑作『グラス・ハウス』でストレートなロックも出来るという新たな才能を知らしめて以降、81年のライヴ盤『ソングズ・イン・ジ・アティック』を挟んで82年に発売された8枚目のスタジオアルバム。発表当時、内容の社会性が大きな波紋を投げかけた。また、ビートルズから受けた影響も隠すことなく反映させた内容となっている。

 A面は社会的内容、サウンドとも申し分ないできの「アレン・タウン」や、ビートルズ、特に後期のジョンの作品を髣髴とさせ、本家に対抗できるぐらいの素晴らしい出来の「ローラ」など、彼にとって初めてトータル性をも感じさせて、新たな境地を開いたといえる内容となっている。一方B面は、雰囲気はA面を引き継いでいるものの、曲的には特に取り立てるものはなく、平凡な出来。

 スターダムに上ったあともスタイルを変えてファン層を広げてきたビリーも、さらに大物になる上で避けることの出来ない"社会性"を訴える件については、まぁ成功したといえるだろう。しかし、ついに息切れの雰囲気を感じさせてきたことは次作で明らかになる。